2004年に岩手県大槌湾に面する国際沿岸海洋研究センターにて行ったメソコスム実験(植物プランクトンブルームの形成・崩壊過程における細菌群集の変動)の試料についてBrdU/DGGE解析を行った。この結果、全体の細菌群と増殖速度の速い細菌群のDGGEバンドパターンはほぼ一致しており、増殖速度の速い細菌が群集内の優占種となっていたと考えられる。さらに、植物プランクトンブルームの形成期から崩壊期にかけて、細菌群集構造は大きく変化し、ブルーム形成期に活発に増殖する細菌、崩壊期に入ってから特異的に増殖する細菌の存在が確認できた。16S rRNA遺伝子の一部をシークエンス解析した結果、形成期に醗な細菌はAlteromonas sp.(gammaproteobacteria)に近縁な1クローンで、崩壊期に活発な細菌はStaleya属(Roseobacter clade)に近縁な3クローンとPolaribacter sp.(Cytophaga group)に近縁な1クローンであった。これらの細菌群を、植物プランクトンブルームの形成・崩壊にかかわるkey speciesとしてモニターすることで、ブルームに伴う物質循環の解明ができると期待される。これらの一連の成果は、第11回国際微生物生態学会、第22回日本微生物生態学会にて発表した。また、2004年度南大洋、2004・2005年度瀬戸内海・対馬沖、2005・2006年度北海道サロマ湖、2005・2006年度広島県呉湾の試料はDNA抽出、及びBrdU-DNA分取を完了しており、現在解析を進行中である。 また、2006年度の5月に東大附属国際沿岸海洋研究センターにてメソコスム実験を行い、1・2月にJAMSTEC研究船白鳳丸航海で東部地中海の3測点、6深度の計18試料、3月に創価大学・北海道東海大学との海氷生態系共同調査に参加し、3測点で試料採集を行った。また、広島県呉湾において2005年度7月から2006年度7月まで継時的に試料採集を行い、また2006年度9月より神奈川県相模湾において創価大学・横浜国立大学と継時的共同調査を開始した。これらの試料についても同様に、BrdU/DGGE解析を行う予定である。
|