本年度はpSLA2-L上のSARP遺伝子によるランカマイシン(LM)とランカサイジン(LC)の生合成調節機構とpSLA2-L上の転写調節因子による胞子形成能制御の解析を行った。 1)SARP遺伝子破壊株ΔsrrYはLM、LC両方の、ΔsrrZはLMのみの生産能を持たない。これらの株での両遺伝子の発現パターンからSrrZがSrrYの下流に位置していることが確認された。次に過剰発現用プラスミドOEsrrZ、OEsrrYの導入株を構築した。ΔsrrZ+OEsrrY株はLM非生産だが、ΔsrrY+OEsrrZ株はLMで生産であった。以上よりSrrZはSrrYを介してLM生産を活性化していることが示された。また、ΔsrrY+OEsrrZ株のLM以外に生産する4つの化合物の化学構造決定を行った。1つはLMアグリコンであり、1km遺伝子群の発現解析からSrrZがPKS遺伝子の転写を活性化しLMアグリコン合成を促進することが明らかとなった。また、他の3つはLC誘導体であり、SrrZがSrrYの機能を代替可能であることが示唆された。最終年度は様々な変異株における3つのSARP遺伝子やLM、LC生合成遺伝子の転写解析を行い、SARP遺伝子による生合成の制御機構を明らかにする。 2)pSLA2-L上の6つのTetR型転写調節遺伝子のうち、srrA、srrC、srrDの破壊株は胞子形成が異常であった。走査型電子顕微鏡像観察からこれらの株では気中菌糸形成が異常であった。また、srrA、srrCとγ-ブチロラクトン生合成遺伝子srrXとの二重破壊株では胞子形成能が回復し、SrrXが胞子形成を負に制御していることも示唆された。加えてプラスミドを有しない株の気中菌糸形成は正常であるが、胞子形成が異常であることも明らかとなった。最終年度はこれらのデータをもとにプラスミド上の胞子形成関連遺伝子の解析を行う。
|