自我漏洩感とは、対人恐怖症や統合失調症等に広くみられる重要な症状であり、自分の内面的な情報(感情や思考)が他者に伝わったと感じる体験である。自我漏洩感については、これまで実証的な研究が行われてこなかったため、治療法開発に至っていない。本研究課題では、この自我漏洩感による苦痛を長びかせる要因(維持要因)を対処方略の観点から明らかにする。平成17年度は、実際にどのような対処方略が行われているのかを明らかにし、測定尺度(自我漏洩感対処方略尺度)を作成した。まず、大学生に対する面接調査によって、苦痛な自我漏洩感に対してどのような対処方略をおこなっているのかを聴取した。ここで集められた対処方略を項目化し、再検査信頼性、内的整合性の2つの信頼性を検討した。そして、それぞれの対処方略がどのような効果を持っているのかを縦断調査により確認した。 まず、収集された項目を因子分析した結果、自我漏洩感対処方略尺度は8つの下位尺度をもっていることが明らかになった。各下位尺度の再検査信頼性、内的整合性は十分なものであることが確認された。そして、縦断調査の結果から、自我漏洩感の苦痛を下げる効果を持っている対処方略と自我漏洩感の苦痛を高めてしまう効果を持っている対処方略が特定された。また、自我漏洩感は、その生起する状況によって性質が異なることが明らかになっているが、対処方略に関しても状況に応じて効果が異なることが示唆された。 本研究の成果は、心理学雑誌への投稿論文としてまとめられ、現在査読中である。
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