研究概要 |
自我漏洩感とは、対入恐怖症や統合失調症等に広くみられる重要な症状であり、自分の内面的な情報(感情や思考)が他者に伝わったと感じる体験である。自我漏洩感については、これまで実証的な研究が行われてこなかったため、治療法開発に至っていない。本研究課題は、自我漏洩感による苦痛を長びかせる要因(維持要因)を対処方略の観点から明らかにし、治療法を考案することを目標とする。日本学術振興会特別研究員採用第3年度である平成19年度は、前年度に得られた維持要因についての知見に加えて、これまでの実証研究で示された知見に基づき、自我漏洩感に対してどのように認知行動療法的なアプローチがおこないうるか、そのプロセスの具体化を試みた。 まず、自我漏洩症状をもっている人は、他者に気持ちがつたわってしまうと感じること自体に違和感を感じたり苦痛を感じたりしていること(佐々木・丹野,2005)が明らかになっている。よって、介入の第一段階として、自我漏洩感を持つことに対するノーマライジングを行なうことが必要である。その上で、自我漏洩感に没入してしまう対処行動は何か、自我漏洩感から距離をとることのできる対処行動は何か、について心理教育を行う必要がある。更に、自我漏洩感をどのようにとらえるかによって苦痛な体験となるか自然な心の働きと感じることができるかが決定されるため、その捉え方に焦点をあててその修正を試みる。今後は実際の事例に即して、プロセスの精緻化を行う予定である。
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