骨粗鬆症は治療に加えて予防が極めて重要である。本研究においては、温州みかん成分β-クリプトキサンチン(CRP)の新しい生理作用として骨代謝調節機能を解明し、その骨粗髭症の予防への展開を試みた。 これまでの研究により、CRPは骨組織培養系において、骨形成促進作用と骨吸収抑制作用を発現することが明らかにされた。また、骨形成促進作用の細胞分子機構についての知見が得られている。さらに、骨吸収抑制作用の作用発現機構と骨粗鬆症予防への有効性について究明した。 まず、CRPの骨吸収抑制作用の細胞分子機構について、マウス骨髄細胞培養系から得た成熟破骨細胞培養系を用いて調べた。CRP(10^<-7>-10^<-6>M)は成熟破骨細胞の細胞死(アポトーシス)を引き起こした。また、そのメカニズムとして、アポトーシス誘導に関与するカスパーゼ3の発現を促進し、アポトーシス抑制に関与するBcl-2の発現を抑制する作用に基づくことが明らかとなった。さらに、CRPは成熟破骨細胞の酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ並びにシステインプロテアーゼのカテプシンKの発現を抑制しその骨吸収活性を減弱することが明らかとなった。 次に、CRPの骨粗鬆症の予防への有効性について究明した。CRP(5及び10μg/100g体重)の3ヶ月間の経口投与は、閉経後骨粗鬆症モデル動物である卵巣摘出ラットの骨量減少を有意に修復することが見出された。さらに、CRP高含有ミカン果汁の健常人(老齢人及び閉経後女性を含む)の摂取(3.0あるいは6.0mg/200ml/日の28あるいは56日間の摂取)は閉経後女性においても骨形成マーカーの上昇と骨吸収マーカーの低下もたらすことが見出された。 このように、β-クリプトキサンチンの細胞分子機構が明らかにされ、本因子の骨粗鬆症への有効性が示された。
|