ヒト臓器由来mRNAよりUGT1A1、UGT1A4、UGT1A6およびUGT1A9のcDNAを合成し、発現ベクターを作成した。各分子種の塩基配列はシークエンス解析により確認した。得られた発現ベクターをヒト胚腎由来HEK293細胞に導入し、各分子種の単分子種発現系および2種ずつさまざまな組み合わせで同時に組み込んだ異分子種共発現系を構築した。異分子種共発現系においてクローニングを行い、様々な発現比および発現量のクローンを得た。作成した発現系よりtotal cell lysateを調製し、UGT1Aすべての分子種に共通の認識配列をもつ抗体を用いたWestern blot解析により、UGT各分子種の蛋白量を移動度の差を利用し分離して求めた。認識配列が同じであるため、各分子種における抗体の反応性が等しいと仮定し、分子種間の比較を行った。酵素活性の比較は基準クローンのmg蛋白あたりのUGT1A蛋白発現量を1unitと定義し、1unitあたりの活性値で評価した。 各分子種に特異的な基質として、エストラジオール(UGT1A1)、イミプラミン(UGT1A4)、セロトニン(UGT1A6)、プロポフォール(UGT1A9)を選択し、グルクロン酸抱合活性を測定した。共発現による酵素活性への影響を検討したところ、UGT1A1酵素活性において、UGT1A4、UGT1A6との共発現によりK_m値の増大が、UGT1A9との共発現によりV値の低下が認められた。UGT1A4酵素活性は、UGT1A1やUGT1A6との共発現の影響は受けないものの、UGT1A9との共発現によりKm値とV値の増大が認められた。UGT1A6酵素活性は、 UGT1A1やUGT1A4との共発現の影響は受けないものの、UGT1A9との共発現によりV値の低下が認められた。このように、異分子種との共発現により酵素活性のキネティックパラメータが変化し、分子種によって異なる影響を受けることを明らかにし、ヒト肝ミクロソームにおけるUGT酵素活性を評価する上で有用な情報となった。
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