昨年度、ヒトUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)1A分子種のうち、UGT1A1、UGT1A4、UGT1A6、UGT1A9をそれぞれ2種類ずつ同時に発現させた共発現系を構築して酵素活性を評価したところ、異分子種の発現により当該酵素のキネティックが変化することを明らかにした。今年度は、酵素活性の変化がヘテロダイマー形成による蛋白一蛋白相互作用によるものかどうか、以下の検討を行った。 1.熱安定性の検討 熱に対する安定性は各蛋白に固有のものと認識されている。そこでUGT1A1、UGT1A4、UGT1A6、UGT1A9の単分子種発現系を57℃で15分プレインキュベートした後、特異基質を用いて酵素活性を測定したところ、UGT1A1、UGT1A4およびUGT1A6はほとんど失活しているのに対し、UGT1A9は熱に対し強い抵抗性を示すことを明らかにした。また、UGT1A1、UGT1A4およびUGT1A6はUGT1A9と共発現させることにより熱耐性を獲得することを明らかにし、UGT1A異分子種間で相互作用していることが示された。 2.UGTヘテロダイマーの検出 免疫共沈降法によりUGTの蛋白相互作用の検出を試みた。UGT1A6/UGT1A9の共発現系において、UGT1A6特異的抗体によりUGT1A9も免疫沈降されたことより、UGT1A6とUGT1A9が直接相互作用していることが示された。UGT各分子種に対する特異抗体が限られているため、他の分子種の組み合わせを検討できず、Native-PAGEによる検討を行った。その結果、単発現系において50kDa付近にモノマー由来のバンドが認められただけでなく、100kDa付近にホモダイマー由来のバンドが認められた。また、UGT1A1/UGT1A4の共発現系では特有のバンドが認められ、ヘテロダイマーを形成している可能性が示唆された。 以上、昨年度明らかにしたUGT異分子種共発現による酵素活性の変化はUGTのヘテロダイマー形成が関与していることが示唆された。
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