本年度は、修士論文において扱ったレヴィ=ストロースの構造人類学の形成過程の検証作業を継続するとともに、次年度以降の長期現地調査に向けての予備調査・資料収集を並行して行った。 ■レヴィ=ストロースの人類学的認識論の形成過程、原住民の自然観の分析における科学的解析力の制度をめぐる研究を行った。それと並行して、来年度以降の現地調査のフィールドとなるカナダ北西部における、原住民の土地権・環境問題についての文献サーヴェイを行った。受け入れ研究者である渡部公三教授主催の科研費による研究会「植民地化以後の土地及び環境利用の変化-その現状への影響アセスメント手法構築」に参加し、オーストラリアを初めとする各地の類似事例との比較・参加研究者との情報交換を行った。次年度以降に、現地調査の概報を問う研究会で行う予定である。なお、みすず書房から刊行予定のレヴィ=ストロースについての論文集に所収の論文の翻訳および巻末の著作リスト作成にも携わった(論文集は平成18年4月に『『神話論理』の森へ』として刊行予定)。 ■上述の理論的・学説史的検討と並行して、海外で3度にわたり情報・資料収集を行った。まず、フランス・パリにおいて、レヴィ=ストロースの現在における受容状況を調査するとともに、グランパレでのブラジル・インディアン展を中心に、レヴィ=ストロースの理論形成の資料および北米原住民との比較検討のための資料を収集した。学休期間の8・9月にはカナダ・ブリティッシュコロンビア州にて予備調査を行い、プリンスルパート付近・およびポートアルバーニ付近の二箇所で次年度の現地調査の調査地選定を行うとともに、上記二箇所に加えてバンクーバーでも政府・原住民間の利害衝突とその調停プロセスについての資料収集を行った。10月には、パリで、受け入れ研究者でもある渡辺公三教授のレヴィ=ストロース博士へのインタヴュに同行し、質問項目の作成の補助および、インタヴュでの補助作業を行い、当該研究にかかる情報の聞き取り作業も併せて行った。
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