本年度は雄アリ検索システムの構築に向け、前述の材料収集のほかに東南アジアのアリ類の分類体系整備に力を入れつつ、国内の画像データベースの改訂とそれに必要な国内のアリ類の分類の整備を並行して行なった。この成果は学術論文3編と学会発表4編として発表された。具体的には、アジア産ハナナガアリ属の分類学的な再検討で雄アリの部分の執筆を担当し、属内での雄アリ形質の分類的な有用性を検討、日本昆虫学会で発表した。さらにその材料で雄アリの形質からカギバラアリ亜科全体の体系を再検討し、これを国際学会で発表した。並行して分類学的検討を継続していたアギトアリとその近縁種の研究成果も受理され、まもなく出版となる。 国内では、検索システムの基盤となる日本産アリ類画像データベースの情報更新を進め(現段階で約190件を更新)、改訂方針と途中経過を日本蟻類研究会の大会で発表した。また国内の分類体系整備にもつとめ、最新の日本産種名一覧と世界の属名一覧をまとめ、現在印刷中の日本産ウロコアリ属Strumigenysの未記載種の検討結果についての発表を行なった。さらに国内の分布情報整備のため、2004年から2006年まで熱帯農学研究センターが参加した屋久島での調査を基に同島のアリ相をまとめ、まもなく出版予定である。 これに加えて春にはタイのカセサート大学と国立科学博物館を訪問して、博物館とは共同研究を行なうことで合意できた。国内コレクション内の所蔵状況把握にもつとめ、鹿児島大学と香川大学を訪問し、山根教授コレクションや伊藤教授コレクションを探索して前者についてのデータベース化を行なった。
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