δ-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS)はミトコンドリアマトリックスに局在する短寿命タンパク質として知られている。本研究ではラット肝臓ミトコンドリア内におけるALAS分解とその制御について検討している。ALASはヘム生合成系の律速酵素であることから、検討課題はポルフィリン症との関連が考えられる。これまでに初代培養ラット肝細胞及びミトコンドリアにおいて、ヘム生合成存在下でALAS分解が抑制され、さらにヘミン添加によりその抑制が解除されることを見出している。このことは、ヘムによる律速酵素分解速度調節を介したヘム生合成制御機構の存在を示すものである。 今年度は、ALAS分解酵素検索のためのALAS分解再構成系確立に向けて必要な情報であるラット肝臓におけるALAS分解条件の検討を行った。その結果、ヘム生合成阻害剤投与によりALAS分解が抑制されたラット肝臓において以下の事が明らかとなった。 ALAS分解速度に対する灌流処理の影響について検討した。生理食塩水で脱血処理を行った肝臓由来のミトコンドリアにおけるALAS分解はほぼ停止していたのに対し、Williams' medium E灌流処理を行った肝臓由来のミトコンドリアにおいては分解が観察された。培地に含まれるALAS分解に必要な成分について調べたところ、アスコルビン酸またはシステインであった。さらに、脱血処理肝臓由来のミトコンドリアに対し、アスコルビン酸あるいはシステインを作用させるとALAS分解の促進が観察された。従って、ALAS分解には還元作用が必要であり、分解はミトコンドリア内で起こっていることが示された。
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