研究概要 |
2p-3dヘテロスピン系単分子磁石を構成単位として次元性を拡張することを目的とし、2つのピリジル基を持つ3つの新規アミノキシル配位子(N,N-bis-2-pyridyl aminoxyl:2,N,N-bis-3-pyridyl aminoxyl:3,N,N-bis-4-pyridyl aminoxyl:4)を2〜4を設計した。 【実験、結果】新規アミノキシル配位子2〜4はそれぞれ対応するヒドロキシルアミンを合成し、適当な酸化剤によって酸化することで比較的安定な化合物として単離することができた。 得られたアミノキシル配位子を用いて遷移金属錯体を合成し、X線結晶構造解析による構造解析、およびSQUIDでの磁気挙動の測定をおこなった。 1.X線結晶構造解析 アミノキシル配位子2のCu錯体は2つのピリジン窒素が同じ金属イオンに配位した単核錯体分子であったのに対し、配位子3のMn錯体は2つの金属イオンを架橋することで1次元の鎖状錯体となっていた。 2.磁気測定 アミノキシル配位子3の各種遷移金属錯体についてラジカル-Mn間には強磁性、ラジカル-Cu間には反強磁性てきな相互作用が観測されたが、いずれも非常に弱いものであった。 アミノキシル配位子4の金属錯体においては1次元鎖構造に由来すると考えられる明瞭な磁化率の増加を観測し、ラジカル-Cu間で16K程度の強磁性相互作用があると見積もった。また、Co錯体においては交流磁化率の周波数依存性もみられた。 【まとめ】新規に合成、単離が可能であることを示したアミノキシル配位子2〜4について、3または4を配位子として用いることで、構造的な次元性の拡張が可能であることが明らかとなった。特にアミノキシル配位子4はその磁気相互作用の程度から、2p-3dヘテロスピン単分子磁石間を磁気的に連結していくという目的に適当な配位子であることを示した。
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