研究課題
アブシジン酸(ABA)の量の調節機構を明らかにするため、シロイヌナズナを用いて、生合成と不活性化の両者のメカニズムについて研究を行った。生合成の調節機構において、生合成の鍵酵素と考えられている9-シス-エポキシカロテノドジオキシゲナーゼ(NCED)は5つからなるファミリーを形成している。本研究において、種子登塾期にはAtNCED6とAtNCED9が主要な役割を果たし、種子のABA量および休眠性に影響を及ぼすことを明らかにした。不活性化経路においては、シトクロムP450をコードする4種のCYP707A(A1からA4)が鍵酵素であると考えられている。乾燥ストレス時には、CYP707A3 mRNAが主要に発現しており、この遺伝子のノックアウト植物が乾燥に対して耐性を示すことや、ABA量の過剰蓄積を示すことから、植物体においてCYP707A3がABAの不活性化に主要な役割を果たしていることが明らかとなった。また、種子登塾期において、CYP707A1とCYP707A2は種子登塾期期と後期にそれぞれABAの主要な不活性化を担い、乾燥種子におけるABA量に影響を果たすことを明らかにした。CYP707A変異体中の解析から、種子の休眠性の強さが、乾燥種子に含まれるABA量よりも、種子吸水時におけるABA量の維持の強さと相関を示すことを明らかにした。さらに、CYP707Aの阻害剤を探索することを目的に行った研究においては、ジベレリンの合成阻害剤として知られていたウニコナゾールがCYP707Aの酵素活性阻害に非常に強い効果を示すことをin vitro実験により発見した。実際この化合物を処理した植物がABA量の過剰蓄積ならびに乾燥耐性を示した。この結果から、ウニコナゾールをリード化合物したよりCYP707Aに特異的な阻害剤(農薬)開発につながることが期待される。
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Plant Journal 45
ページ: 309-319
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