光情報通信・情報産業において、大容量情報をリアルタイムで処理できるシステムが求められており、そのための光記録媒体や能動的な光機能素子が必要となっている。そこで、光照射における高分子の分子配向制御によって材料中に複屈折性や二色性を誘起する光記録材料やそのシステム化について多くの研究が行われ、光スイッチ、ホログラフィー、入射する光波の偏光状態を変換・制御する機能性素子への応用展開研究が活発化している。とくに、高速光応答性や高屈折率変調を達成できる種々のアゾベンゼン高分子液晶材料の偏光軸選択的な光異性化による液晶フォトニクスの研究は光記録のみならず、光誘起配向による屈折率変化を利用したホログラム記録材料として期待されている。 本申請者は17年度までに熱安定性に優れ、かつ光により書き換え可能なフォトニクス材料の構築を目指し、アゾベンゼン液晶部を有する光反応性高分子液晶を合成し、その光配向させた薄膜における光スイッチングや、アゾベンゼン部のシス体の軸選択的光反応にもとづいた新しい光配向法をすでに見いだしている。17年度ではその成果をもとに、光応答性アゾベンゼン部を側鎖に有する高分子液晶薄膜のトランス体より長波長域まで吸収末端を有するシス体の軸選択的な光反応による新しい光配向制御技術に関する研究を行った。合成した高分子液晶の種々の波長の光における反応性、安定性、光吸収特性と長波長光での偏光光再配向挙動を偏光分光光度計ならびに偏光IRを用いて、系統的、かつ詳細に調べることで薄膜内の液晶メソゲンの動きを3次元的に解明し、長波長光を用いた光異性化反応した部位の選択的光反応による新しい3次元配向制御技術の確立とメカニズムの解明を行った。また、光架橋性部とアゾベンゼン部を有する高分子液晶を合成し、光架橋部のアゾベンゼン部の配向挙動への影響を詳細に調べ、熱的に安定な能動的光学デバイス創成の足がかりをえた。
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