今期間の成果は次の3つである。 第1に、土地をめぐる社会問題の理論的研究として、バブル期日本を素材にした「バブルという変容と土地の現在」と題した学術講演を第78回日本社会学会(2005年10月23日)で行なった。具体的には、土地商品の金融商品化が社会意識に及ぼす影響を分析するために、バブル期における経済事件をめぐる社会的受容のプロセスを、報道・公判資料などから検証しなおした。現在、日本社会学会機関誌で査読中である。 第2に、近年焦点になっている中心市街地活性化問題について、中小企業経営と土地所有権の関係から社会調査を行ない(2004年9月〜2005年10月)、後掲の学術論文2本として成果をまとめた。具体的には、法制史・経営史・地方史などの文献調査を進めると同時に、神奈川県小田原市の中心商店街において、男女20代〜80代までの商店関係者約50名に、生活史調査を行なった。なお方法論的にも有意義な成果をもたらしたことから、現在同様の手法にもとづいて、日比谷界隈のビル街についても調査を進め、来年度5月に日本都市学会シンポジウムにて報告を行なう予定である。 第3に、土地利用法制の国際比較のために、制度改革の進んでいるスコットランドと相互研究を進めた。具体的には、スコットランド政府・自治体実務者と研究者との間で、互いに調査と報告を行なった(2005年11月13〜20日スコットランド調査・2006年1月30日〜2月3日日本調査)。具体的には、スコットランド・ダンディ市と神奈川県横浜市・小田原市における土地利用計画の再編過程を、現場の担当者・関係者あわせて約40名にヒアリングを行なうとともに、相互の知見を報告しあった。この成果はウェブサイトで公開しているほか、来年度、共著として公刊する計画を進めている。
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