2004年度から着手したサンタ・アニェーゼ・フォーリ・レ・ムーラ聖堂(7世紀前半建設)の実測調査を一通り完遂することができた。トータルステーションを用いた精密な測量(基準点測量の角誤差21")によって得た実測値を元に、地上階と階上廊の平面図を作成し、建築的な特徴の分析を進めている。現時点での成果は、日本建築学会関東支部研究会(3月10日)で報告した。また、目視調査による列柱(柱身・柱頭)についての論考をまとめている。これらの成果については、スパニェージ教授(ローマ大学;古代・中世建築史)とともにイタリアの学会誌での投稿の準備を進めており、またブランデンブルク教授(在ローマ・ドイツ考古学研究所;初期キリスト教建築史)とペンサベーネ教授(ローマ大学;初期キリスト教考古学・大理石研究)から助言を受けるとともに、研究データの公開を準備している。 また、12月には日高教授(指導教官)のもとで、ハギア・ソフィア大聖堂学術調査に参加した。サンタ・アニェーゼ聖堂(537年建設)で得た建築的特徴(階上廊の壁面・列柱・コーニスの対称的な双曲線)が、ユスティニアヌス帝期の代表的な建築であるハギア・ソフィア大聖堂にも認められた。この点について、今後さらに検討を進める予定である。 さらに、1月には、ベッリンゾーナ(スイス)の公文書館を訪れ、19世紀にハギア・ソフィア大聖堂の修復を行った建築家フォッサーティ兄弟の文献を調査した。現在その内容について分析中である。 2月には、イタリアで刊行されるラヴェンナのサン・ヴィターレ聖堂(546年頃建設)の大理石調査に関する本に寄稿(イタリア語)した。来年度刊行予定。
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