研究課題
本研究では、超伝導デバイスを用いた単一磁束量子(SFQ)回路による超高速マイクロプロセッサの実現を目指し、既に動作実証を行った簡単なマイクロプロセッサの高性能化を目的としている。本年度得られた成果は以下の通りである。1.より処理能力の高いマイクロプロセッサ全体の設計を行った。既に動作実証を行ったマイクロプロセッサは、集積レベルの制約から命令数も少なく、性能も200MIPSにとどまっていた。そこで、要素回路と命令数を増やし、性能を向上させるために、パイプライン処理と複数の演算器を利用するアーキテクチャの実現を検討した。本研究ではSFQ回路の高速性を最大限に引き出すためにビットシリアル処理を採用している。パイプライン処理の実現に当たっては、命令の実行とビットシリアル処理に用いるクロックを使い分けることで制御を簡略化し、ビット操作を20GHz以上で行うことが可能になった。演算部の設計では、要素回路間に設けたバッファ回路を工夫することでビットシリアルデータの受け渡し操作をパイプライン化し、ビットシリアル処理の高効率化のため、演算器を縦続接続する手法について検討した。これらの検討の結果、ピーク性能を1桁向上させられることがわかった。2.SFQ集積回路技術の大規模化に取り組んだ。大規模化の問題のひとつとして、回路へ供給するバイアス電流が発生させる磁場の影響が従来から知られていた。この問題を解決するために、横浜国立大学と共同でバイアス供給線を超伝導層でシールドした新セルライブラリの構築を進めた。3.構築したセルライブラリを利用することによって、設計したマイクロプロセッサの殆どの機能が、20GHz程度で動作することを確認し、その有効性がわかった。しかし、要素回路ごとにバイアス電流に対する動作領域がずれることで全体の動作が困難になることもわかったため、引き続き解決策の検討を進める。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
Supercond.Sci.Technol. 19, no.5
ページ: S344-S349
ページ: S340-S343