エンドサイトーシスによって細胞内部に取り込まれた物質は、エンドソームにおいて輸送先に応じた選別を受けることが知られている。本研究では、物質の選別過程で機能するESCRTタンパク質複合体に対し、Alix及びそのカルシウム依存的な相互作用因子であるALG-2が関与する分子メガニズムとその生理的意義の解明を目的としている。 本年度前半においては、前年度の研究によって得られていたカルシウム依存的なALG-2とESCRT-Iの構成因子であるTSG101との相互作用に関する知見についての解析を続行し、投稿した。具体的には、ALG-2がエンドソーム様の構造物上に局在することを蛍光免疫染色法によって見出し、その局在が細胞内カルシウムのキレーターであるBAPTA-AM処理によって阻害されることから、ALG-2がカルシウム依存的にエンドソームに局在し、機能しうることを明らかにした。 後半は、BroLと名付けたAlixのホモログとESCRT-III構成因子であるCHMP4との相互作用について詳細な検討を酵母Two-Hybrid法とpulldown法によって行った。その結果、AlixおよびBroLはそれぞれ有するBro1ドメインを介してCHMP4と相互作用していることが明らかとなった。Alix酵母ホモログのBro1ドメインの立体構造が、最近報告されていたため、その報告を参考にして幾種かの点変異体を作製し、相互作用を検討した。しかしながら、現在作製した全ての変異体はCHMP4結合能を有しており、目的としていた結合能を欠損した変異体は未だ得られていない。
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