当研究室では、電子求引性基を有するアリールボロン酸がアミド及びエステル縮合反応に有効な触媒であることを報告している。この触媒を用いたアミド化反応は等モル量の基質で触媒的に進行し、副生成物が水のみであるという点で画期的であるが、低極性溶媒、共沸脱水という反応条件が必要であり、熱に弱い基質への適用は難しく、エステル化反応に至ってはアルコール溶媒、共沸脱水という反応条件においても満足のいく反応性は得られていない。 そこで私は極性溶媒中で高活性を示し、触媒の回収再利用が容易なアリールボロン酸触媒の開発を目的に分子内にカチオン部位を有するアリールボロン酸を合成した。この触媒の狙いは触媒のカチオン部位のカチオン性が極性溶媒中で高められ、その結果ホウ素のルイス酸性が向上することを期待した。実際エーテル、ニトリル、アミドといった極性溶媒中でアミド化反応を、またアルコール溶媒中でエステル化反応を行ったところ既存の触媒よりも高い反応性を示した。 次にこの触媒のイオン性を利用しイオン性液体による触媒の回収再利用を試みた。様々なイオン性液体(イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩)を検討した結果、[emim][OTf]などのイミダゾリウム塩が最適であることがわかり、3回以上の回収再利用が実現できた。 さらにポリマー担持型ピリジニウムボロン酸を合成し触媒の回収再利用を試みた。カウンターアニオンやポリマーと触媒間のリンカーの長さを検討し、最適なポリマー担持型触媒を合成した。その結果、活性を落とすことなく3回以上の回収再利用が実現できた。
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