本研究は、骨、歯、貝殻などに代表されるような生物の作製する無機材料(バイオミネラル)に倣い、常温・常圧付近における次世代型の材料合成プロセスおよび新しい有機無機複合材料の開発を目指して行われた。前年度までの成果より、高分子や有機分子と結晶の分子認識を有効に活用することで様々な結晶のデザインが可能であることがわかった。これらをふまえ、本年度はさらに結晶のデザインを発展させることを目的とし、その研究成果は大きく以下の3点にまとめられる。 (1)実際のバイオミネラルとの比較 実際のバイオミネラルに関しての分析を行った。これまで行われていたマイクロメートルスケールの分析ではなく、ナノメートルレベルまで詳細な解析を行うことで、新しいナノスケールの構造の発見に至った。また、これらの構造体の有機分子との複合状態や形成プロセスを把握し、生物が実際にどのように高分子による分子認識と結晶成長を行っているのかについて新しい知見を得ることができた。 (2)機能性酸化物への応用 これまでに明らかにした高分子や有機分子を利用した結晶成長を、機能性の金属酸化物ナノ構造体への応用へと展開した。室温、水溶液中における結晶成長を制御することで、酸化マンガンや酸化タングステンなどの電極・触媒などのへの応用が可能な酸化物のナノ構造体の作製とその構造制御に成功した。 (3)研究全体の総括 最終年度にあたり、どのように高分子と結晶を分子認識させて無機材料をデザインするかについて、各段階で得られた結果をまとめ、そのプロセスや可能性についてまとめた。
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