研究概要 |
1.2005年,遠藤・石井はシンプルスパインの特異構造を用いて,ブロック数と呼ばれる閉3次元多様体の位相不変量を定義した.私は,(3次元球面および2次元球面と円周との直積という2つの例外的多様体を除く)一般の3次元多様体に対してブロック数がヒーガード種数と一致することを証明した.これにより,ヒーガード種数というよく知られた不変量がシンプルスパインの特異構造を見ることにより再定義され,ヒーガード種数を用いた新たな分類の方針が立つことになる. 2.3次元多様体内のフロースパインは分岐曲面とみなすことが出来るが,フロースパインは一般にはその特異点の近傍(o-グラフ)のみからは決まらないということがベネデッティ・ペトロニオにより証明されている.私はフロースパインのo-グラフだけで,そのフロースパインを含む多様体が一意的に決定されることを証明した.また,2つの多様体連結和のo-グラフを与える公式,およびo-グラフから規約性やアトロイダリティを判定する十分条件を与えた. 3.スパインをパラメータ付けすることにより得られていた閉3次元多様体のクラスを,3次元球面内の絡み目に沿った手術を用いて表し,特に,その双曲的体積と多様体の三角形分割との関係を考察した.これは閉3次元多様体の体積予想の数値的実験に寄与するものであると考える. 4.3次元多様体内の結び目について,結び目とスパインとの位置関係と,結び目とヒーガード曲面の位置関係との関係を明らかにし,特に,ツイスト結び目については,ペトロニオ・ペルボバにより定義された結び目の複雑度について,これの上からの評価を与えた.
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