本研究の目的は、自然電位、MT観測により、深さ数km以浅の水理構造を推定し、火山の活動様式との関連を調べることである。具体的には、電磁気的観測から推定することができる山体内の浸透率や熱水系の広がりが、火山の活動様式と関連があるとの作業仮説の元、研究を進めている。広く成立している関係を得るために、いままであまり観測対象となっていない静穏な火山も含め、多く火山での観測を行った。本研究で対象としたのは、浅間、榛名、蓼科、男体、日光白根、那須、吾妻、栗駒、岩手、岩木、霧島の活動様式の異なる11火山である。 本年度はまず、自然電位の研究に力をいれた。上述の11火山で、山体を横切る5-10km程度の測線で測定をおこない、多様な自然電位分布を得た。次に、自然電位の発生に影響を及ぼすパラメータである、岩石-水のゼータ電位を、自然電位調査中に地表で取得した岩石サンプルを用い、室内実験により求めた。その結果以下の新たな知見が得られた:1.山体規模の自然電位異常が存在する斜面と、存在しない斜面がある。2.山体規模の自然電位異常の有無と、山腹-山麓の地熱活動の有無が対応している。3.局所的な自然電位異常については表層のゼータ電位の不均質に対応しているように見えるが、山体規模の異常については表層のゼータ電位不均質では説明できない。現時点ではこうしたことの原因は特定できないが、自然電位分布が、山体内の水理構造と密接に関連することがこれまで以上に明確になった。 MT観測は、浅間山、男体山において実施した。それぞれ、自然電位測線沿いにデータを取得し、比抵抗構造を推定した。推定された構造は、自然電位の変極点付近の500mほど地下に、比抵抗のギャップがあることを示す。比抵抗のギャップは流体の量や、形態のギャップと解釈できるので、この結果も自然電位分布が、山体内の水理構造と密接に関連することを示している。
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