自然界の光合成を模倣した電荷分離システムを構築するため、これまでに様々なポルフィリン(ドナー)-フラーレン(アクセプター)連結化合物を合成し、その光化学挙動を明らかにされてきた。しかしながら、このような光合成反応中心モデルシステムを高効率エネルギー変換デバイスとして効果的に応用した例はほとんどない。そこで、本研究では自然界の光合成のような分子集合体に基づく全く新規な光電変換デバイスの作製を試みるため、まず、ペプチド鎖で集合化したマルチポルフィリン集合体の合成を行い、ポルフィリンとフラーレンの間の三次元的な立体構造の制御に基づいた一連の新規有機太陽電池を開発した。混合分子クラスターの作製方法としてまず、ポルフィリン及び過剰量のフラーレン(C_<60>)のトルエン溶液を用意し、それを三倍体積量のアセトニトリルと混ぜ合わせることよりに混合分子クラスターを作製した。さらにこの分子クラスターを酸化スズ透明電極上に電圧をかけることにより、混合分子クラスター修飾酸化スズ電極を作製した。これらの光電気化学特性についてはNaI 0.5M及びI_2 0.01Mのアセトニトリル溶液を電解液とした湿式二極系を用いて検討した。紫外可視吸収スペクトルの測定から、酸化スズ透明電極上での混合分子クラスターは可視光領域のみならず、近赤外領域まで幅広くかつ高い吸収特性が観測された。また、分子クラスターの形成においてポルフィリン分子集合体を用いた場合、その単量体と比較して、光電流発生のアクションスペクトルが可視光領域全体にわたり効果的に観測された。これはポルフィリンとフラーレンの間の超分子集合体形成が光エネルギー変換において重要な役割を果たすことを示すものである。エネルギー変換効率としては現在最適の系では1.6%に達している。また、フラーレンに代わる他のカーボンナノマテリアルについても同様の検討を行い、効果的な知見が得られた。
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