研究概要 |
気泡速度分布計測および気泡周りの液相速度分布計測は,気泡流の挙動を正確に予測する上で重要であるが,その実験の困難さから未解明のままである.そこで著者らは,超音波流速分布計測計(UVP)を用いて,気泡近傍の流動計測を試みてきた.UVPは計測線上の瞬時速度分布が計測できるため,気泡界面からの速度分布としてデータを整理できるばかりか,不透明壁や不透明流体への適応が可能であるなどの利点がある.しかしながら,測定体積が比較的大きいため,計測する気泡流のボイド率によっては,超音波の基本周波数を適切に選択する必要が生じる.一般に,発信超音波の指向性および強度分布は超音波の二つのパラメータである基本周波数と空間内超音波ビーム径の関係に依存する.そこで本研究では,一つの超音波トランスデューサ(TDX)に同心円状に二つの異なる共振周波数の超音波振動素子を埋め込んだ同軸二波長超音波センサ(マルチウェイブ・トランスデューサ)を開発するとともに,超音波流速分布計測計を用いてマルチウェイブで計測するマルチウェイブ超音波法を提案し,気液二相流の気相液相計測に応用した.本TDXは外径13mmの円筒樹脂でケーシングされ,センサの先端部に直径3mmの共振周波数8MHzの圧電波素子(内素子)と,その同心軸に内直径3mm,外直径10mmの中空状の共振周波数2MHzの圧電素子(外素子)が埋め込まれ,内外それぞれの素子からリード線によりBNC端子に接続した.そこでまず,本TDXの性質を調べるために数値積分法を用いた超音波の放射音場の解析を行い,音場特性を調べた結果,素子から25mm以上遠方の領域を用いることで計測に適応可能であることを確認した.次に市販のUVPを二台用い,鉛直円管内気泡流の計測を行った.その結果,気泡速度分布と液相速度分布をそれぞれのUVPで計測可能であることを示した.
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