超半球形状を有するガラスは、光の回折限界を超える分解能を有するSolid Immersion Lens(SIL)や高い効率で光を閉じ込める光共振器として機能する。このような光学素子には数百nm以下の加工精度が求められるが、既存の作製技術でこれを満たすのは難しく、作製誤差による歩留まりの低下が問題となっている。我々はガラス融液と基板との濡れ性を利用してマイクロメートルサイズの超半球型ガラス光学素子を作製するSurface-tension Mold(StM)法を開発した。炭素質基板上でガラス微粉を熱処理し、軟化させることで一度の熱処理で大量のガラス超半球を作製できる。こうした光学素子は屈折率が高い材料を用いるほど高い光機能を発現できるが、高屈折率ガラス(屈折率n>1.7)は結晶化による失透や基板との反応を伴うことが多く、StM法を適用するのが困難であった。本年度の研究では、種々の高屈折率ガラスの熱物性を調査し、熱的安定性が比較的低いガラスに対しても熱処理条件を最適化することによりStM法を用いて超半球化できるかを検討した。 ガラス組成はLa_2O_3-ZnO-B_2O_3-SiO_2系の2種類のガラス(LZBS-1:n=1.718、LZBS-2:n=1.786)を用いた。通常の溶融葱冷法により作製したガラスを粉砕筋い分けにより20〜50μmのガラス微粉とした。これを、鏡面研磨したグラッシーカーボン基板(中心線平均粗さRa<2.0nm)上に分散させ、H_2/N_2雰囲気中600〜800℃で熱処理した。ガラスの結晶化領域を明らかにし、これを考慮しながら温度プログラムを最適化することで、真球面を有する透明なガラス超半球を作製することに成功した。LZBS-1およびLZBS-2ガラスの接触角の平均値は、それぞれ137および152°であった。本研究により、屈折率が1-7を超える高屈折率ガラスに対してもStM法が適用可能であることが示された。StM法を種々のガラス系に適用して、様々な光学条件(屈折率、形状:、光透過率)を持つガラス超半球を作製でき、高い光機能を発現する超半球型光学素子へと展開できるものと期待される。
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