研究概要 |
リン欠乏時の膜脂質転換はリン脂質の分解と、その代替としての糖脂質の合成により行われるが、リン脂質の分解についてはボスホリパーゼCとボスファチジン酸ボスファターゼ(PAP)に触媒される2つの経路が考えられている。昨年度、申請者はこの段階に関わるボスホリパーゼC、NPC5を同定、解析した。本年度、申請者はリン欠乏時の膜脂質転換に関わるPAPについて、関連する遺伝子の単離および機能解析を行った。昨年、酵母で単離された新規のPAPであるPAHをもとに、シロイヌナズナにおいて相同性検索を行ったところ、2つのホモログAtPAH1,AtPAH2を同定した。これらは、酵母のpah破壊株を機能的に相補できることから、PAPをコードしていると考えられた。これらの遺伝子の破壊株を作成したところ、各々の単独破壊株では表現型を示さないものの、二重破壊株ではリン欠乏において野生株と比べてリン脂質の増加と糖脂質の減少が見られた。また、この二重破壊株はリン家乏において明らかな生育の遅滞を示した。In vivo pulse-chase実験の結果、この二重破壊株では、ボスファチジン酸の分解が抑制されていることが明らかとなった。以上より、申請者は日本学術振興会特別研究員DC2の採用期間において、これまで遺伝子レベルでの知見のなかったリン欠乏での膜脂質転換に関わる2つの経路の鍵酵素を双方について単離、解析した。
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