研究概要 |
プレソーラー粒子とは,私たちの太陽系が形成した以前に存在した恒星の周囲で形成された粒子のことであり,太陽系とは著しく異なる同位体比を持つことから同定される.その研究は恒星の進化や初期太陽系星雲の環境に関する情報を与えてくれる. プレソーラー粒子の中でもケイ酸塩粒子は,高空間分解能の同位体分析技術の発達により最近になって発見が可能となった.本研究では複数の隕石サンプルに対して,同位体顕微鏡(2次イオン質量分析計+二次元イオン検出器)を用いたその場同位体イメージングを行い,プレソーラー粒子の探索を行った.サンプルには母天体水質変質を受けたと考えられているコンドライト隕石からTagish Lake(CI2)とAcfer214(CH3)を,また母天体変成変質作用をほとんど受けていないと考えられているコンドライト隕石からはAcfer094(type 3 ungrouped), Adelaide(type 3 ungrouped), ALHA 77307(CO3.0), Yamato-81025(CO3.0)を選んだ.その結果,SiCなどのプレソーラー炭素質粒子はすべての隕石から発見された.一方でプレソーラーケイ酸塩粒子は変成変質作用を受けていないコンドライトから発見されたが,水質変質を受けたコンドライトからは発見されなかった.この結果から炭素質粒子は水質変質によって破壊されにくく,一方でケイ酸塩粒子は水質変質によって同位体的性質を失うことがわかった.また,発見されたプレソーラーケイ酸塩粒子は,酸素同位体比の特徴から主に酸素に富む赤色巨星またはAGB星を起源とすると考えられる.
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