プレソーラー粒子は、我々の太陽系が生まれる以前に存在した恒星の周囲で形成された固体微粒子であり、隕石中に生き残っている。プレソーラー粒子の同位体、鉱物的特徴を研究することにより、太陽系形成以前の恒星や初期太陽系の進化や環境に関する情報を得ることを目的とした。特にケイ酸塩粒子は太陽系物質の主構成要素であり、先太陽系史を解明する重要な手がかりになる。粒子の探索には、北海道大学にある同位体顕微鏡(二次イオン質量分析計+二次元イオン検出器)を用いた。サブミクロンの空間分解能をもつ、その場同位体比イメージングにより同位体比に大きな異常をもつプレソーラーケイ酸塩粒子が発見される。発見した粒子はサブミクロンと微小であり、高空間分解能をもつ電界放出型走査型電子顕微鏡で観察した。 本研究では、隕石母天体における変質変成の度合いが異なる複数の炭素質コンドライト隕石を分析対象とした。その存在度を比較すると、変成変質をあまり受けていないタイプの隕石においてプレソーラーケイ酸塩粒子が最も多くみつかった。水質変質や熱変成を受けた隕石ではそれより少ないか、みつからない。隕石母天体中の変成変質作用により、ケイ酸塩粒子の持っていた同位体の痕跡が失われたことが示唆される。プレソーラーケイ酸塩粒子の酸素同位体比はこれまでよく研究されている酸化物粒子のそれと同様な分布を示した。同位体比からそのほとんどは酸素に富む赤色巨星またはAGB星を起源とすると推定される。超新星爆発を起源とする粒子はわずかしか発見されていないが、生成する粒子のサイズが分析の分解能を大きく下回るからかもしれない。
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