昨年度に保護されたバンコマイシンアグリコンの大量合成法、グルコース誘導体の固相上へのPd触媒を用いたMigita-Stilleカップリング反応を用いた担持法を確立した。本年度は担持した固相上のグルコースを糖供与体へと変換し、バンコマイシンアグリコンとのグリコシル化反応について検討した。実際には、アノマー位のMPM基を酸性条件下除去しラクトールへ変換したのちに、N-フェニルトリフルオロイミドイルクロライドを作用させ固相上で糖供与体である舟フェニルイミダート糖を合成することに成功した。続いて、各種活性化条件化でバンコマイシンアグリコンとのグリコシル化反応を行ったが、目的とするシュードアグリコンを全く得ることができなかった。実験結果からペプチドスペーサーとバンコマイシンアグリコンの相互作用が示唆されたことから、アルキルスペーサーへと変えてグリコシル化反応の検討を行った。その結果、27%と中程度の収率でシュードアグリコンを得ることに成功した。また、この糖供与体は様々な糖受容体(糖、アミノ酸、脂肪鎖アルコール)などと高収率でグリコシル化反応が進行することを明らかとした。 開発した手法を用いてバンコマイシン誘導体の合成を行った。保護基を変えたグルコースを合成し、同様に担持、グリコシル化を行った。つづいて2位の保護基(AZMB基)を選択に脱保護し固相上のアクセプターへと変換した後に、別途合成したバンコサミンのフッ化糖とのグリコシル化反応を行った。最後に求核剤としてアセタート、チオアセタート、クロリド、アジドアニオンをそれぞれ作用させることで固相上から切り出し、目的とするグルコースの6位を官能基化した糖鎖変換型バンコマイシン誘導体の合成を達成した。またアセタート体の脱保護を行うことで天然物であるバンコマイシンと各種スペクトルデータが一致すること確認した。
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