本研究はスサビノリの配偶体世代、胞子体世代をつなぐ果胞子、殻胞子、単胞子に焦点を当てて、それらの発芽・発生過程について透過型電子顕微鏡観察を始めとした細胞生物学的手法によって調査することを目的としている。本年度は、前年度に引き続き以下の3項目について研究を行った。 1.胞子体の殻胞子嚢において細胞質分裂の過程を観察した。その過程において、細胞膜由来の小胞の蓄積が隔壁形成に関与していることが示唆された。また、ピットプラグに沿った特徴的な細胞膜の伸長様式についてはウシケノリ目において共通した現象であることを明らかにした。以上の結果については国際学会誌であるPhycologiaに投稿し、2008年の1月号に掲載された。 2.配偶体(キシラン、マンナン)および胞子体細胞の細胞壁成分が大きく異なることに着目し、微細構造の観察および組織化学的な実験を行ってきた。その結果、それぞれの微細構造は、上記のような細胞壁の組成の違いは微細構造も強く反映していることが考えられ、胞子体では明瞭な繊維状構造が観察された。また、組織化学的な実験では多糖を染色する染色剤の他に、特異的な多糖と結合ずるレクチンを用いて果胞子および単胞子の発芽体における標識パターンを観察した。その結果、RCA_<120>などいくつかのレクチンにおいて標識箇所の有無が両発芽体において異なっていることが明らかになっている。 3.配偶体における造精器細胞の形成過程、またそれに伴って起こる核分裂について光学顕微鏡および電子顕微鏡観察を行った。造精器形成過程については紅藻において共通した現象であることが示された。さらに核分裂に関しては、紅藻細胞に特徴的なポーラーリングの挙動について細胞周期を通して明らかにした。以上の結果は、スペインで行われた国際学会で報告し、現在、国際学会誌に投稿し、査読中である。
|