1.人工アミノ酸河川水を用いた母川記銘実験 ヒメマス幼魚が母川のニオイ物質の記銘に要する期間を明らかにすることを目的とし、記銘実験を実施した。実験水は飼育水に洞爺臨湖実験所飼育水において未検出のProおよび既検出であるGluを添加したもの(10^<-6>M)を用いた。記銘は母川記銘時期とされる5月に行い、各月150尾ずつ、実験水に暴露することで行った。実験水に暴露する時間を変化させた5種類の記銘群(1時間、6時間、1日、7日、14日)を作成し、6月(記銘1ヶ月後)、10月における記銘群及び無記銘群(control)の実験水に対する嗅覚応答(EOG)を比較した。14日(GluおよびPro)記銘群の実験水に対する応答強度はコントロール群のものと比較して大きくなる傾向が見られた。7日記銘群においても同様の傾向が認められたが個体差がみられた。一方、他の実験群1時間、6時間、1日記銘群とコントロール群間における実験水に対する応答性に大きな変化はみられなかった。従って記銘にかかる期間は7日から14日間、必要である可能性が示唆された。 2.脳波ロガーを用いたサケ科魚類の遊泳行動解析 脳波ロガーを用いて自由遊泳中のニジマスから嗅球誘起脳波の測定を試みた。昨年の実験では電極の振動によるノイズが多く認められたため、これを抑えるために電動ドリルによる嗅球付近の局部的な切開手術を行い、電極の装着方法に改良を施した。麻酔下におけるニオイ刺激に対する嗅球誘起脳波をロギングしたデータを解析した結果、嗅球誘起脳波は安定して記録されており、ニオイ刺激に対する振幅の増大も鮮明に記録されていた。Y字水路内で自由遊泳させた場合の嗅球脳波は麻酔下のそれと比較してノイズ、また魚が水路の壁に衝突した際の大きなノイズが記録されていたが、強いニオイ刺激(Ser 10^<-4>M)に対する振幅の増大は認められるようになった。
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