研究課題
近年、特定のクローン(JFH-1株)を用いたC型肝炎ウイルス(HCV)の増殖系が確立されたものの、未だHCVの感染機構の詳細は明らかにされていない。昨年度、我々は、HCVエンベロープ蛋白質を被ったシュードタイプ水庖性口内炎ウイルス(HCVpv)を作製し、その感染機構の解析を進めてきた。このウイルスはゲノムにエンベロープ遺伝子を持たないため、一度しか感染できず、二次感染は起こらない。今年度はVSVのエンベロープ遺伝子を欠損させ、代わりにHCVのエンベロープ遺伝子を組み込んだ組換えVSV(HCVrv)を作製し、その感染様式を解析した。まず、1a型H77株および1b型Con1株のHCVエンベロープ遺伝子を、VSVのエンベロープ遺伝子を欠損させたVSVのcDNAに挿入し、HCVrvを各種動物細胞で作製した。HCVrvの性状ならびに、感染様式をHCVpvおよびJFH-1株と比較した。その結果、HCVrvはHCVpvと同様に、293TやHuh7細胞で作製すると感染性を示すウイルスが得られ、これらのウイルスはHuh7細胞に最も高い感染性を示した。HCVrvの作製は37℃よりも、30℃で培養した方が高い感染価のウイルスが得られた。また、293TやHuh7細胞で作製したHCVrvは、HCVpvと同様に、抗hCD81抗体やC型肝炎患者血清で中和された。さらには、Huh7細胞でのみ、HCVrvの感染の拡大が観察された。今回作製した組換えVSVは、これまでのシュードタイプウイルスやJFH-1ウイルスと同様に、hCD81依存的な感染性を示した。また、一部のHuh7細胞株では、HCVrvによって発現されたHCVエンベロープ蛋白質を利用して、感染を拡大していることが確認された。自立増殖可能な組換えVSVを用いることにより、各種遺伝子型のHCVの感染機構を詳細に解析することが可能になるものと思われる。
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Journal of Virology 80
ページ: 11265-73