水分解の触媒になるであろう酸素架橋型及びOH架橋型マンガンポルフィリンダイマーにおいて第一原理計算であるハイブリッド密度汎関数法を用いて電子状態解析を行った。系のトータルエネルギーとスピン二乗の固有値からハイゼンベルグモデルにおける有効交換積分値を求め、実験と比較した。酸素架橋型からOH架橋型に変え、また架橋部分の歪みを取り入れることによって理論的に求めた有効交換積分値は実験値に近づくことがわかった。これより架橋部分の構造が、系全体の電子状態を非常に敏感に反映することがわかった。自然軌道解析の結果、系の磁性発現にかかわる分子軌道を特定することに成功した。 アメリカ、ユタ大学のJ.S.Millerが合成に成功したマンガンポルフィリン一次元錯体においてその磁性発現機構を第一原理計算によって解析することを試みた。一次元錯体をそのまま取り扱うことは無理なので、これをマンガンポルフィリン-TCNEダイマーの錯体を簡約化することで計算可能にした。この錯体の電子状態計算を行うことで、フェリ磁性の発現機構を解明した。具体的には、三サイトの計算値から有効交換積分値を求める式を算出し、理論計算から有効交換積分値を求めたところ、反強磁性的相互作用が優先することがわかり、この結果フェリ磁性が発現していることが判明した。自然軌道解析を行うことで磁性発現に関わる分子軌道を特定し、金属に局在する軌道とTCNE上に局在する軌道間の相互作用を明らかにした。
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