デカメチルフェロセン-TCNE系とその類似化合物である含マンガン、クロム系であるメタロセンのドナー、アクセプター系における強磁性発現機構を計算化学の観点から解析した。スピン分極機構が、実験結果から推測されていたが、自然軌道解析からの占有数の値を用いることで、スピン分極が実際に存在することが確認された。CASCI計算を行なうことにより定量的にスピン分極の効果を確認し、これが主な強磁性発現の原因となっていることを確認した。 マンガン置換したホースラディッシュペルオキシダーゼは強い酸化酵素であることが報告されている。この活性中心は、オキソマンガンポルフィリンを含んでおり、この酸素-マンガン間の結合様式が反応に重要になってくる。高酸化数をとる五価マンガンと酸素間の結合解離には、制限解であるMn(V)+^1O^<2->と非制限解であるMn(III)+^3Oの二通りの可能性がある。S.Shaikの報告では、メタル-酸素間にスピン分極の無い制限解での報告がなされており、BS法を用いて計算することによってより安定な状態を記述できるのではないかという疑問があった。研究においては、オキソマンガンポルフィリン系に注目し、メタル-オキソ間の非制限解を用いた解離におけるポテンシャル曲線を書き、スピン密度の結果からマンガン-酸素間におけるスピン分極が現れることを確認し、BS解が制限解よりも安定に存在することを明らかにした。
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