研究概要 |
本研究は,高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)を用いて生体分子の高分解能観察を実現することを目的としている.本年度は、我々の研究室で独自に開発したミニマムドーズシステムと精密なフォーカス調整を行うことなく無収差位相像を取得できる3次元フーリエフィルタリング法(3DFFM)を用いてDNAの高分解能観察を試みた.3DFFMは,上記の特徴に加えフィルタリング処理によるS/N比の向上も期待できる.そのため,低電子線照射を強いられる生態観察に適していると考えられる.3DFFM処理パラメーターは,アモルファス試料を用いた実験とドーズ量を考慮したシミュレーションを行い,本観察システムにおいて最適な値を用いた. 観察に用いたミニマムドーズシステムは,43msの短時間電子線照射で得られた複数枚の画像を用いて視野探しや軸調整を行うことができるシステムである.そのため,視野探し及び軸調整に用いる電子線ドーズ量を20el/Å^2以下に抑えることが可能となった.その結果,最初の和100el/Å^2の照射中にDNA分子が激しく振動し,その後振動が比較的小さくなる様子を観察することに成功した.これは,最初の数100el/Å^2の電子線照射中に結合の弱い部分が切断されることを示唆する結果である.また,全体的に分子構造は激しく潰されているが,DNAの幅2.3nmおよび二重螺旋のピッチ3.4nmとよく一致するコントラストを部分的に得ることにも成功した.
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