IL-6/gp130を介したシグナル伝達系の異常はマウスにおいて自己免疫性の関節炎を発症させることがわかっているが、そのメカニズムとしてT細胞の恒常的な増殖(ホメオスタティック増殖)が重要なのではないかということが明らかとなっている。ではこのホメオスタティック増殖がどのように自己免疫を発症させているかという疑問に基づき、免疫寛容状態のT細胞をホメオスタティック増殖させた場合にどのような現象が起きるかということを解析した。 今年度に明らかにしたこととしては、免疫寛容状態のT細胞はホメオスタティック増殖により再び抗原に対する反応性を回復することであり、このことから自己免疫寛容の破綻にホメオスタティック増殖が深く関わっている可能性が示唆された。では、このような分裂はgp130シグナルによってどのように制御されているかを解析するため、gp130に変異を導入したgp130 F759/F759マウスやIL-6ノックアウトマウスにおける免疫寛容状態のT細胞のホメオスタティック増殖について検討を進め、ホメオスタティック増殖が亢進しているgp130 F759/F759マウスにおいては生体内における免疫寛容の破綻も起こりやすい可能性が示唆された。さらに、IL-6/gp130シグナルによって誘導されるどのようなサイトカインが免疫寛容状態のT細胞を増殖させるのかを検討することにより、自己免疫寛容の破綻に重要なサイトカインの同定を検討中である。現在、最も有力なサイトカインはIL-7であり、このサイトカインは非常に強力なT細胞生存因子として知られている。IL-7を生体内で過剰発現させてやることによりホメオタティック増殖が亢進することが明らかとなった。 来年度は寛容状態のT細胞の分裂もIL-7の過剰発現によって亢進するかを検討し、IL-6-gp130-IL-7の経路が生体内での免疫寛容維持にどのように関わっているかを解析する予定である。
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