(1)石川県立図書館所蔵「吉本文庫」及び石川県立歴史博物館所蔵文書の調査を踏まえ、石川県の御用新聞『開化新聞』『石川新聞』の発行部数、流通範囲、享受実態を検証。戸長・副戸長や地方名望家などの関与、及び享受の範囲が彼らの範疇にとどまることなどを明らかにした。 (2)銅版草双紙について二点検証。一つは製作費用の問題で、直接的な史料はないものの、京都大学附属図書館所蔵『京都出版史料』を援用しながら、木版印刷より安価にはなりえなかったことを明らかにした。今一つは有り様の問題で、日清戦争期において銅版草双紙が子どもたちに軍人の勇姿を視覚的にすり込むメディアとして機能していたことを指摘した。 (3)越後川口の真島家に所蔵されていた和古書の書誌目録。村落の教養を主導する立場にあった家の蔵書構成の典型例として報告した。鈴木俊幸氏との共編。 (4)明治初期の山梨県で開催された新聞解話会の実態に関する検証。従来の研究では、(1)新聞解話会の出席率は極めて低く、(2)また出席者も豪農豪商など地域の指導的立場にある人物に限られていたと指摘されてきたが、今回の新たに発見した史料によって各地域の具体的様相を明らかにすることができた。すなわち、(3)出席率は地域によって異なること、(4)その出席率の高さは地場産業の隆盛に支えられていたこと、(5)そうした地域の出席者は、地域民全般におよんでいることなどを明らかにした。
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