平成18年度は、現代ケニアにおける裁判外紛争処理の現状とその再綿過程を明らかとするために、既存の裁判外紛争処理と、米国から技術移転された新設の裁判外紛争処理の両者について基礎資料の収集を行った。また、下記のとおり、研究代表者のウェブサイト(www.geocities.jp/nnrht736)、学会・研究会での口頭報告ならびに論文・著書の刊行により、研究成果の公開を順次進めている。 1.ケニア国内における新設の裁判外紛争処理機関について、調査研究に着手した。とくに、世界各地で修復的司法や地域的特性重視のADR運動を支援するメノナイトのケニアにおける活動(とくにAFRIPADの活動)について基礎資料を収集している。その最初の研究成果を、大阪大学トランスナショナリティ研究セミナーで報告した(演題「ADRの技術移転と多元的法体制の再編」)。当日の配布資料は、ウェブサイトで公開している。 2.メル博物館(ケニア国立博物館)を拠点としたメル社会の伝統的知識に関する共同研究の最初の成果として、英文論集The Indigenous Knowledge of the Ameru of Kenya(共編著)を刊行した。所収の8報告のうち3本が既存の裁判外紛争処理についての詳細な民族誌報告であり、本研究にとって重要な資料集となった。また、本書を、博物館近辺の学校、図書館、関係者、ケニア国内の研究機関に計200部寄贈し、成果公開につとめた。 3.日本支化人類学会研究大会ならびに日本法社会学会学術大会において、法人類学理論の基礎研究の成果を発表した。会場で配布した論文(全12頁)は、ウェブサイトで公開している。本論文は、大幅な修正を施したうえで既に投稿じており、来年度中に学術雑誌上で公刊したい。また、別の基礎研究論文「制裁の語りにおける合意のインプリケーション」は『法社会学』65号(特集「サンクションの法社会学」)に掲載されている。
|