最終年度にあたる平成18年度は、現代ケニアにおける裁判外紛争処理の現状とその再編過程を明らかにする本研究の成果をとりまとめ、研究代表者のウェブサイト(www.geocities.jp/nnrht736)、論文・著書の刊行により、研究成果の公開を進めた。 1.世界各地で地域立脚型の紛争処理を支援するメノナイト中央委員会(MCC)のケニアにおける活動(とくにAFRIPADの活動)に関する調査研究の成果をとりまとめた。本年度中、「ADRとメノナイト-アジア・アフリカにおける多元的法体制の新しい展開」と題する論文(査読制)が『法律時報』79巻12号に、「ケニアの民間開発」と題する論文(依頼)が『季刊民族学』123号に掲載された。 2.メル博物館(ケニア国立博物館)を拠点としたメル社会の地域固有の知識に関する共同研究の成果報告集として、英文論集The Indigenous Knowledge of the Ameru of Kenya(共編著)の第2版を刊行した。全13章約200頁におよぶ本書の第V部「平和と紛争解決」所収の3論文は、既存の裁判外紛争処理についての詳細な民族誌報告を所収しており、本研究にとって重要な資料集となった。本書を、メル博物館を通じて、博物館近辺の学校、図書館、ケニア国内研究機関等に計300部寄贈し、成果公開ならびに現地還元につとめた。 3.以上の研究成果は、来年度に2つの国際学会で発表する予定であり、現在その準備を進めている。また、法社会学、法哲学、実定法、法実務等の関連諸分野との協同、さらにはケニアを含む海外機関の研究者、実務者との協同のうえに、分野横断的かつ実践的研究に発展させていくための準備に着手したところである。
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