研究課題
本年度の研究では人間言語の(非)対称性の研究の一環としてガーナで話されているBuli語の研究を行った。Buli語の述語分裂構文(Predicate Cleft Constructions)の研究ではCPとDPの間に統語構造の平行性及び対称性が存在することを明らかにし、同現象がその対称性の上に成立するものであることを示した(Linguistic Analysis 32に出版)。また同じくBuli語のA'現象に於ける補文標識一致現象(Op-C Agreement)の研究では、補文標識の形態的交替が統語関係の局所性に支配されていることを示した(NELS 35に出版)。さらに同じくガーナで話されているDagaare語の研究に於いてはいわゆる連結動詞構文(Serial Verb Constructions)と述語分裂構文(Predicate Cleft Constructions)の相互作用に主眼を置き、連結動詞構文が従来考えられて来た非対称的な統語構造を基底に持つのではなく、対称的な統語基底構造の上に成立していることを明らかにした(現在査読中)。またトーゴで話されているGur諸語の一つであるKabiye語のフィールドワークを通じて同言語の主要部内在型関係節(Head-Internal Relative Clauses)の統語構造及び形態論的特徴の詳細な研究を行った。この研究では主要部内在型関係節がCPとDPの対称性と多重関係性の上に成立するという汎言語的知見に新たな経験的確証をもたらしたのみならず、関係代名詞の成り立ちと文レベルの構造との間に興味深い類似性が存在することを明らかにした。最後に本年度後半よりナイジェリアで話されている言語の一つであるIbibio語の一致現象とA'諸現象の関連の研究をインフォーマントと開始しており、18年度も引き続き行う予定である。
すべて 2006
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The Proceedings of NELS 35
ページ: 267-278
Linguistic Analysis 32, 3-4
ページ: 544-583