今年度の研究では、主に次の3つの成果が得られた。 第一に、高校3年生を起点としたパネル調査のデータを用い、大学進学行動の地域差に関する分析を行った。男女別、地域ブロック別にサンプルを分割し、学力(中学時代の成績)や両親の所得、地域の進学機会(最も近い大学までの距離)と大学進学との関連を分析したところ、非大都市圏で自宅から私立大学に進学する場合、学力や所得が影響しないことなどが明らかになった。関連する問題も含め、あらためて分析した結果は近く論文にまとめる予定である。 第二に、都道府県別の大学進学率の横断面データを、5年おき5時点(1980〜2000年度)にわたってプールしたパネルデータを用い、男女別大学進学率と所得との関連の経年変化を分析した。分析から得られた主な知見は、男子の場合、1980年から90年にかけて低下した所得との関連が2000年には再び上がっているのに対し、女子の場合は90年まで下がり、以後横ばいであることなどである。 第三に、大学生に対する調査データを用い、退学や転学に関する意識の分析を行った。(1)大学での成績が振るわなかったり、学内の人間関係へのコミットメントが希薄だったりする学生ほど大学をやめて仕事につきたいと考えていること、(2)豊かではない家庭出身の学生は、そうした退学意識をむしろ抱かない傾向にあること、(3)他の大学への転学を希望するのは、豊かな家庭の出身者や大学の成績がよい学生、そして大学での人間関係にあまりコミットしない学生であることが明らかになった。
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