本研究の目的は、ブラックホール候補天体の周囲の現実的な降着円盤及び降着流を用いて、輻射スペクトル及び偏光度の計算、及びそれらの物理量の質量降着率とブラックホール角運動量に対する依存性を調べることである。そのために、今年度はまず、回転するブラックホール時空上において任意の状態方程式に対して遷音速解を求めることを目的とし、基礎方程式の定式化を行った。この定式化を元に、ガンマ線バースト中心にあると理論的に予想されているニュートリノ冷却優勢円盤の遷移音速解の計算及び低輝度活動銀河核中心に存在すると予想されている輻射的に非効率な降着流及び移流優勢降着流の遷移音速解を求めた。この計算を元に、ガンマ線バーストの爆発エネルギーの最有力候補であるニュートリノ対消滅エネルギーの計算を回転するブラックホール周囲の測地線方程式及び輻射輸送方程式を解くことにより求めた。この結果、従来の研究は定量的に意味のある結論を下していないこと、及びニュートリノ対消滅エネルギーがガンマ線バーストの爆発に本質的であるかを定量的に見積もるためにはニュートリノ発生源である降着流の温度をファクター2以下に求めないと意味がないことがわかった。また、これらの遷音速解を用いることで、ブラックホール周囲の降着流の相対論的効果が観測量に対してどのような応答を示すかに関しても計算した。一方で、現実的なブラックホール降着流中では磁場の効果が重要であると指摘されていることを踏まえ、遷磁気音速流からの輻射計算の一般相対論的な定式化を行った。この定式化を元に輻射光子量が多いショック解を求め、そのショックの観測される可能性があるイメージと輻射スペクトルを計算した。これらの成果は、国内及び国外の研究会、国内の学会で発表を行った。また、一部の成果を国際誌に成果発表し、残りの成果は論文として国際誌に投稿準備中である。
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