生物が鉱物を作ることをバイオミネラリゼーションという。代表的なバイオミネラルとして歯や骨、貝殻真珠層や甲殻類の外骨格などがある。加藤らはこれまでに貝殻真珠層の形成過程に倣い、水に不溶な高分子マトリクスと酸性官能基をもつ水溶性高分子添加物の協同効果を利用して薄膜状の炭酸カルシウム結晶が自己組織的に形成することを見出している。 本研究では、甲殻類(アメリカザリガニ)の外骨格より単離した石灰化に関与するタンパクCAP-1に着目した。昨年度にCAP-1の存在下、キチン薄膜上に成長する炭酸カルシウムの結晶を詳細に調べたところ、一軸に配向した薄膜結晶が成長することを見出した。また、組み換えタンパクや合成オリゴペプチドを用いて対照実験を行い、70残基目のリン酸部位が表面モルホロジーに重要な影響を与えていること、CAP-1中央部にあるキチンと特異的に結合する部位(リバース・リジフォードコンセンサス配列)が、一軸に配向した薄膜結晶の形成に必要であることが分かった。本年度は、その他の組み換えタンパクを用いた結晶成長を行なった。 N末端、C末端がそれぞれ15残基欠落した組み換えペプチド(デルタN、デルタC)を用いた。カルボン酸の連続配列を有するC末端を保持したデルタNは一軸に配向した薄膜結晶が成長したのに対し、デルタCは菱面体がやや崩れた結晶が析出した。C末端のカルボン酸の連続配列が結晶成長に大きな効果を与えていることを示している。
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