【背景・目的】グルココルチコイドレセプター(GR)結合因子として同定した核タンパク質HEXIM1は359アミノ酸か:らなり、核内低分子RNAの一種である7SK snRNA(small nuclear RNA)依存的に、RNAポリメラーゼII最大サブユニット、カルボキシル末端ドメインのリン酸化を阻害してクラスII遺伝子発現を普遍的に抑制することが知られていたが、GRを介したグルココルチコイド作用に与える影響は明らかではなかった。そこで、本研究ではHEXIM1のGRに旨与える作用とその機構を解析することを目的とした。 【方法・結果】HeLa細胞、HepG2細胞、ヒト大動脈血管平滑筋細胞などにおいて、グルココルチコイド応答性遺伝子発現のみならず、ヒートショック、環境ホルモン、サイトカイン(IL-6、EGF)などの刺激にそれぞれ応答する多様な遺伝子の発現が、siRNA発現組換えアデノウイルスによるHEXIM1ノックダウンによって増強することを、リアルタイムPCR法により定量的に示した。一方、P-TEFbに結合できない組換えHEXIM1変異体を作製し、この変異体の過剰発現によりグルココルチコイド応答性遺伝子発現が特異的に抑制されることを示し、HEXIM1によるGRを介した特異的な遺伝子発現制御機構の一端を明確にした。 【結論】HEXIM1はP-TEFbのリン酸化酵素活性を阻害する機能とは独立に、GRとの結合を介してグルココルチコイド応答性遺伝子発現の制御に関わる機能を持つ。
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