研究概要 |
本年度は,気泡核の成長過程を定量的に明らかにすることを目的として,分子動力学シミュレーションにもとづく解析を実施した.まず,複数の気泡核の成長過程をシミュレートした結果,不純物の混入がない系では,より大きな気泡核は成長を続けるのに対して,より小さな気泡核は収縮-崩壊に至るという,競合現象を示すことがわかった.これに対して,不凝縮ガスの混入がある系では,おもに気泡核どうしの合体によって成長が進むことがわかった.また,このときの成長速度指数(気泡核の代表長さの時間のべき乗によるスケーリング指数)は,双方の系で1/2に近い値を示す一方,成長速度指数を導出する際に用いた"気泡核半径の総和値"と"総気泡核数"に対するスケーリング指数の間には,大きな差が生じることが確かめられた.このことから,個々の系での気泡核の成長機構の違いは,"気泡核半径の総和値"と"総気泡核数"の二つのパラメータに反映される可能性が高いことがわかった. 続いて,この成長速度指数を決める二つのパラメータが,気泡核のサイズ分布関数の情報を陽に含むことを確認したうえで,定常状態における気泡核のサイズ分布が決まる過程を明らかにするための方針を提案した.また,その際には,個々の気泡核の半径変化の定式化が重要であることを示した.そのうえで,まずは不純物の混入がない系を対象として,気泡核の半径変化の定式化を試み,マクロな気泡の半径変化を記述する際に用いられる方程式の有効性と問題点を示した.また,気泡核の半径変化を定式化するうえでは,表面張力の曲率依存性を厳密に明らかにする必要があることがわかった.
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