本年度は、最近急速に理解が深まりつつある高密度QCDにおいて、中性子星観測との比較が可能である渦生成の機構を明らかにした。論文は現在、Physical Review D誌に投稿中である。この結果をGordon conference (Bates univ.USA)でポスター発表、BNL(USA)でセミナー発表、熱場研究会(基研)で口頭発表を行った。また、高密度QCDの相構造に大きな影響を及ぼすゲージ場の熱揺らぎの効果について新しい知見を得、その結果を物理学会(Hawaii)で発表した。これについては、現在論文を作成中である。以下に研究の概要とその結果をまとめる。 全ての物質は、その密度を極限的に高くすると(原子核の飽和密度の6倍程度)超伝導状態になると考えられ、カラー超伝導と呼ばれる。しかし、その実現が期待される系としては中性子星のコア部分に限られる。従って、天体観測と結びつく特徴的な現象を提唱することは意味深い。私はその重要な鍵となる渦生成の研究をスタートした。この結果、次のことが分かった。まず、カラー超伝導における基本渦は、超流動渦と、ゲージ束との両方の性質を兼ね備えるというエキゾチックな特徴を持つ。また、この渦を構成するカラー磁場と通常の磁場と構成比はカラー超伝導を特徴付ける量の一つであり、渦と中性子星に存在する様々な粒子との散乱断面積に結びつく。従って、ここから観測との比較ができる。 次に、カラー超伝導の相構造に大きな影響の期待されるゲージ場の熱揺らぎの効果を考察した。これまでの研究ではカラー超伝導の有限温度相転移は、ゲージ場の熱揺らぎによって一次相転移になると考えられてきたが、超伝導相の対称性の揺らぎによる変化までは考えられてこなかった。しかし、実際にいくつかの凝縮に対してエネルギーの比較を行ったところ、相転移温度付近で対称性の違った相が出現する現象が見られた。
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