研究概要 |
1.フィールド観測 ヒノキ人工林における雨滴侵食量(地表への雨滴衝突によって起こる侵食)を把握することを目的として,7月から11月にかけて高知県大正町葛籠川流域にて林内雨滴・雨滴侵食量の観測を行った.雨滴侵食をSplash cupによって観測し,同時に得られた雨滴粒径・雨滴衝撃エネルギーのデータを用いて,降雨強度・衝撃エネルギーといった異なる侵食力パラメータによる侵食量評価を行った.期間ごとの雨滴衝撃エネルギーの総量よりも,短時間(特に1時間)での最大降雨強度及び最大雨滴衝撃エネルギーの方が,林内の雨滴侵食との相関が良いという結果が得られた.この結果について12月のAGU Fall Meetingで発表し,また現在投稿論文(Catenaに投稿予定)として取りまとめ中である. 2.植栽ヒノキを用いた人工降雨実験 樹冠通過雨の雨量・雨滴粒径・雨滴衝撃エネルギーの時空間分布を把握し,それらと森林土壌の浸透能低下・土壌浸食との関係とを明らかにし,またそれらに与える樹冠構造(枝下高・葉面積指数など)の影響を評価することを目的として,9・10月に茨城県つくば市防災科学技術研究所の大型降雨実験施設にて降雨実験を行った.高さの異なる2本のヒノキを降雨施設内に植栽し,段階的に枝打ちを入れながら同一降雨イベントを繰り返し与えた.樹幹下に設けた複数観点においては雨量・雨滴測定,小型土槽を用いた表面流・侵食土砂測定を行った.雨量・雨滴衝撃エネルギーは幹から遠ざかるにつれて大きくなり,枝打ちによって雨滴の大粒径化,雨滴衝撃エネルギーの増大が起こること,などが確認された. データが膨大かつ多岐に渡るため,その他の詳細についてはまだ解析中である. 3.論文執筆 9月に投稿した,樹種や気象条件が林内の雨滴粒径分布に与える影響について評価した論文が2月に受理された(11.研究発表 参照).
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