研究概要 |
1)林内雨滴形成機構の解明 2005年に行った移植ヒノキを用いた人工降雨実験のデータ整理・解析を行い,樹冠構造が林内雨滴形成機構に与える影響を評価した.樹冠下の降雨の空間分布のばらつきは幹からの距離で整理され,幹から遠ざかるほど林内雨量が増大した.また枝下高の上昇・樹冠厚の減少が降雨のエネルギーを形成する雨量・雨滴粒径・雨滴速度の全要素を増大させた.管理不足のヒノキ人工における樹冠のうっ閉は,それは下層植生の消失による林床被覆効果の減少を招くだけでなく,下枝の枯れ上がりによる樹冠厚減少を引き起こし,林内雨滴の衝撃エネルギー増大を助長することが明らかとなった.これらの結果については国内外を問わず多くの学会発表にて順次発表され,成果の一部が投稿準備中である. 2)ヒノキ人工林の裸地化林床における雨滴侵食プロセスの解明 2005年に高知県大正町葛籠川流域にて観測されたデータ整理・解析を行った.この観測は,自然条件において雨滴の持つ衝撃エネルギーと雨滴侵食量を同時に測定した初の試みである.既往の農地における土壌侵食研究では,雨滴侵食量は雨滴衝撃エネルギーの総量で決まるとされているが,ある期間の雨滴衝撃エネルギーの総量ではなく短時間(特に1時間)での最大雨滴衝撃エネルギーの方が林内の雨滴侵食との相関が良いという結果が得られた.この結果をまとめた論文は11月に投稿され(雑誌:Catena),major revisionの評価を受け,現在,改稿中である. 3)博士論文の執筆 以上の成果の一部を博士論文に収めた.博士論文タイトルは,"Studies on the process of throughfall drop generation in forest canopies"(樹冠における林内雨滴の形成メカニズムに関する研究)である.
|