研究概要 |
本年度は,我々が開発したマルチ材料を3次元造形することが可能な集束イオンビーム化学堆積法(FIB-CVD)を用いて,in vitroにおいて使用可能なマイクロチューブを作製し,培養神経系細胞の軸索が細胞成長因子(NGF)を与えられたときCMT内に伸展するか否かについて検証した. 開発したFIB-CVD法において走査パターンをチューブ状にし,前駆ガスにフェナントレンを選択すると,中空構造で材料がDiamon-like Carbon (DLC)であるカーボンマイクロチューブ(CMT)を造形する事が可能である.この構造の造形は,方向,大きさなどには自由度があるので,再生軸索の再生経路として使用することが可能であると考えられる. FIbを用いて加工したDLCには,イオン源由来のGaが混入しているため,最初にDLCの生体適合性を評価した.DLC膜上でPC12培養細胞(ラット由来褐色細胞腫)を培養し,神経成長因子(NGF)を添加した後の軸索の伸展を観察した結果,特に伸展を阻害することは観察されなかった. 次に,CMTへの成長軸索の導入を観察するため,第1段階としてin vitroでの培養を行うためにガラスキャピラリー先端およびSiNのウェルにこのCMTがある構造を作製し,培養細胞用の実験装置を開発した.キャピラリー先端およびウェルには内径約3.2〜10μmの複数のCMTが造形され,これを培養細胞の培養チャンバーとした.ガラスキャピラリーおよびSiNウェル内にPC12の細胞体とNGFを含んだ培地を充填して,キャピラリーおよびウェルを内部より濃度の高いNGFを含んだ培地に浸し,CMTを通して内外のNGF濃度勾配を生成した.その結果,SiNウェル上に伸展したPC12の軸索がCMT内部に伸展した結果が得られ,DLCで構成されているCMTは軸索伸展の足場になりえるものであると考えられる.
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