研究概要 |
本研究では、出典記憶の中の時間的文脈に関する記憶を調べる課題の一つである新近性識別課題を扱った。この課題は複数の刺激を連続的に提示し、後にその中に含まれていた2つを見せどちらがより最近に現れたか選択させるものである。本研究ではモデル動物としてマカクザルを使用し、4.7テスラ高磁場fMRIと侵襲的な方法を組み合わせ、出典記憶における前頭葉・側頭葉ネットワークの働きを解明するのを目標としている。本年度はfMRI実験を行うための準備・開発・検討を行ってきた。 当研究室で過去に行った新近性識別課題を用いた健常者に対するfMRI実験では言語刺激を提示していたため(Konishi et al.,2002)、図形を刺激として改変した課題を作成した。サルの訓練を行い安定して新近性識別課題が遂行できるよう仕上げた。MRI装置内は騒音があり狭い空間なので、この環境に対応できるようMRI装置内を模倣した実験システムでの訓練も続いて行った。訓練はほぼ完成し、現在fMRI実験を行おうとしている。また、2頭目のサルの訓練も開始し、fMRI実験に向け進めている。 2006年2月に当研究室の4.7テスラMRI装置の傾斜磁場コイルは交換され、傾斜磁場強度が向上した。撮像パラメータの再調整を行い、機能画像として用いるEPI画像の画質の向上及びゆがみの改善が見られた。これはfMRI実験で賦活部位をより高い空間的精度で同定するのが可能になったことを意味する。 覚醒下のサルのfMRI実験を行う際は頭部固定が必要となる。当研究室で電気生理学実験の際使用していた従来の頭部固定方法では、EPI画像で信号消失のアーチファクトを生みやすかった。そこで信号消失を少なくするための方法の開発・検討を行った。この成果を2006年3月の21世紀COEプログラム「生体シグナル伝達機構の領域横断的研究」第4回リトリートで発表した。
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