研究概要 |
申請者は,カルバゾール(CAR)分解(car)遺伝子群を有するプラスミドpCAR1の諸性質について分子レベルで詳細に解析を行った.本年度はプラスミドの基本機能(複製・保持・接合伝達)を担う遺伝子における発現機構の解明を第1の目的として実験を行った.その結果,IncP-7群プラスミドの1複製に必要なoriV領域を450bpまで絞り込むことに成功し,保持能を担うparWABCが少なくとも1つの転写単位を構成すること,接合伝達能を担うtra/trh遺伝子群が少なくとも4つの転写単位を構成することを示した.pCAR1の安定な保持にはparWABが必要であり,parW上流に弱いプロモーターが,parA上流に強いプロモーターが存在することが示唆された.tra/trh遺伝子群については異なる宿主内における発現量を定量的RT-PCRを用いて比較したが,宿主の違いによって生じる大きな接合伝達頻度の変動を裏付けるほどの差異は見られず,他の宿主因子に起因する可能性が示唆された.こうした基本機能を担う遺伝子の転写制御因子の候補に挙げられたORF70(pmrと命名)の破壊株を作製し,マイクロアレイ解析によって野生株とその遺伝子発現の比較を行ったところ,破壤株においてparABの発現量が有意に減少し,PmrがpCAR1の保持を担う遺伝子群の制御に関与することが示唆された. 一方,実際の環境中におけるpCAR1を有する菌株の挙動解析を第2の目的として実験を行った.4種の土壌と河川水および活性汚泥より実環境のモデルを作製し,各サンプルにpCAR1,を有する菌株を投与後,CAR残存量,全菌体数,CAR分解菌数等を経時的に調べたところ,pCAR1やTn4676を介したcar遺伝子群の水平伝播現象の検出には至らなかったが,モデル環境の種類によってpCAR1を保持する菌体とCARの消長に差異が見られた
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